遺族の悲劇
●とあるマンションで自殺した娘さんと、そのお父さんのお話現場は某県マンション、不動産管理会社からのお問合わせで、
臭いが取れなくて困っている様子。
そこは静かな住宅地の中にある小さなマンションの一室。お部屋は2DK、ロフト付、死因はロフトからの首吊り自殺 死後2~3週間での発見。
慣れた仕事とはいえ自殺現場は気が重くあまり気が進みませんが、それも仕事、気持ちを切り替え、見積もりの為に現場へ急行・・・お部屋の前まで行き鍵を開ける。
毎度の事ですがこの瞬間が一番嫌な時であり緊張する時なのです。
とは言うものの仕事の為、前に進むしかなく、いざ入室。
なんとお部屋は綺麗にリフォーム済み 「・・あれ?お部屋間違えたかな・・?」
と思ったのもつかの間、いつもの臭いが・・・
私はお部屋の中を隅々まで見てまわり原因を探しました。
(中途半端な状態でリフォームしてしまうと原因究明が非常に困難になる。)
なんとかそれを見つけ出すことは出来ましたが、せっかくリフォームしたのがやり直す結果に、その事を見積書に記載し それを提出しました。
それから2週間ほど経った頃でしょうか、また現場に来てほしいとの事。
日取りと時間を決めて後日現場に向かうと 4人の方が現場の前にいました。
1人は、不動産管理会社の方、他の3人は?
近くまで行きご挨拶、なんと故人のお父さんと弟さん
そしてもう1人の方は、ご遺族の依頼でこの部屋を工事した業者さん。
私は不動産管理会社(大家さん)側からの依頼で来ていたので、
ご遺族の方とお会いするのは初めてでした。
そして全員でお部屋に入室。
この件に関して不動産管理会社(大家さん)側の言い分は、
「事故物件とはいえ、この臭いでは人に貸せない・・・」との事。
それを故人のお父さんが、自分で雇った業者さんに 「どうしたらいいんですか?
どうにかなりませんか?」と助けを求めると、その業者さんは「確かに臭いはします、ですが完全に臭いを消すとは言っていない!」と嫌悪感丸出しで反論。
それどころか「工事が終わって色々クレームを付けるお客さんがいますが、工事する側とお客さんの思っているところの違いです。」などと言い、
それを聞いてた私は怒りが込上げ 喉の手前まで出かかった言葉を抑え、
(本当なら、そちらが受けた仕事はお客さんが求める形にする事、
ましてや賃貸物件なら次に人が住める状態にすること、
そして依頼主の負担を少しでも軽くする事じゃないんですか!)
と言いたかったのですが。
私の立場は不動産管理会社(大家さん)側から依頼された立場、
まして同じ業者としての立場でもあり、我慢するしかなく一言だけ業者さんに
「でも、これじゃ人は住めませんよね?」それが私の精一杯の言葉でした。
その後 故人のお父さんが徐にバックの中から亡くなられた娘さんの写真を出し
その後静かに、こう言いました。「私は、自分の娘がしでかした事ですので精一杯の誠意を示し、早急に対応しようと思い、そちら(業者さん)の言われたとおりの金額を支払いました。
定年で年金暮らしの私にはとても大変な負担でしたが、自分の娘の不始末ですから・・・
やっとすべてが終わり安息がきたと思いきや・・・、
解決出来たと思っていた事でまた呼び出されて・・・耐えられない・・・」
痛いほど気持ちはわかります。
年頃の娘をこのような不本意な形で、こんな終わり方をさせる為に育ててきたわけではなかったでしょう、花嫁としての晴れ姿も見たかったでしょうし、孫も見たかったでしょう、
娘のしでかした不始末ですからと言い、誠意を示そうとした故人のお父さん。
本当なら故人とご遺族の顔に泥を塗った業者さんを怒鳴り罵倒するのが普通でしょうがこのご遺族のお父さんは最後まで自分を見失う事なく、立派な方だと思います。
業者さんの心に故人のお父さんの言葉や悲痛の叫びが
どう響いたかは分かりませんが・・・
その後、その業者さんでは対応が出来ないとの事で、私たちが特殊清掃等(原状回復)を対応する事になりましたが、結局遺族は余計な時間とお金を支払う事になったわけです。
また、故人のお父さんには今後の責任はすべて私たちの責任とし、
今後一切遺族の方には何も行かない事を約束し工事を致しました。
その後、一ヶ月も経たない内に、事故物件として借主が決まったそうです。
これでやっとご遺族にも安息が来たのだと思います。
故人様のご冥福をお祈りいたします。
追伸
その後前の業者さんは責任を逃れ、電話にも出ず逃げ回っているとのこと、
あまりの誠意の無さに、裁判にかけるそうです。
このような事例は、そう多いとは思いませんが、業者の技術面の向上もそうですが、
企業としての理念や人としての倫理観をもって取り組んでほしいものです。
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